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自閉症の息子の触覚過敏について。理髪店では大騒ぎで逃げる

この記事は40代の女性に書いていただきました。

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 私には24歳の自閉症の息子がいます。自閉症として生まれた息子にとって、その特性ゆえにいろいろ生きづらいだろうなと思うことが多々あります。

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■感覚過敏について

 自閉症の人は「感覚過敏」を抱えていることも多いです。例えば感覚過敏の一つに触覚過敏がありますが、「触れる」事に関して一般の健常な人よりも感覚がかなり敏感である症状で、洋服を着ているだけでも生地の摩擦が強く感じたり、人から少し触られただけでも痛みを感じるような繊細さがあります。

 また触覚過敏に加え、聴覚過敏も伴っていることが多いです。私たちは様々な生活音の中で暮らしていますが、それでも意識的に物音を聞き分けて聞くことが出来ていますが、自閉症児の聴覚過敏の場合すべての音を拾ってしまうので、頭の中で処理しきれずパニックになってしまうようです。

 知的な面では遅れのない「高機能自閉症」の方からの証言によると「常に自分の周りで工事現場の音が鳴り響いている」という状況があるようで、健常の人よりもかなりストレスの中で生きていると言えます。

 このような感覚過敏・聴覚過敏は、幼いころからの療育で軽減されることもあります。根気よく続ける作業療法や感覚統合療法が必要になっています。療育と実生活での経験を重ねることで、症状が緩和したり、音に対する本人の受け入れ度合いに変化が現れてきます。

 もちろん、訓練しても完全に普通の人の様にはいかないのですが、その場合は防音をするためのイヤーマフ(イヤフォンのような形状)を付けることもあります。

■触覚過敏と散髪

 私の息子の場合、触覚過敏がとても目立ち、幼いころは強い症状が出ていました。体を少し触られるだけでもパニックになり泣き出したり、食事も食材が舌にふれる食感で食べず嫌いになったり、拒否反応が多かったです。

 体を触られることが嫌だとは分かっていても、毎日入浴をしなければなりません。お風呂で体や髪を洗うことは本人にとってはとても苦痛なようで、毎日泣きながらの入浴でした。

 繊細な刺激を少しでも和らげようと、柔らかいタオルでなでるように洗ってあげていましたが、それでもその刺激すら耐えられないようでした。

 また定期的に髪の毛が伸びるために、理髪店で散髪をしてもらわなければならないのですが、髪を切ることも大きな刺激だったようでした。

 ハサミやバリカンはもちろん、櫛で髪を撫でることすらも、彼にとってはとても刺激が強いものだったのです。髪を切る前の散髪用ポンチョを着るまでも一苦労で、切り始めても大騒ぎで逃げ惑うため障害の特性を理解してくださる理髪店を探し、事前にお願いをして、上半身裸でポンチョは付けずに散髪してもらっていました。

 またじっと椅子に座ることも困難だったために、立って逃げる息子を追いかけながらの散髪になっていました。理髪店から「うちではちょっとお子さんの散髪は難しいです」と断られたこともありましたが、何店かめぐって相談したときに、とても理解のある理髪店に出会い、そこに通うようになりました。

 最初は暴れて抵抗していた息子も、散髪の練習も兼ねて2週間ごとに理髪店を訪れるようにして家庭でも、散髪に行った時のシミュレーションも何度も練習しました。理髪店通いを続けているうちにだんだんと散髪に対しての抵抗が薄れてきて、1年もたたないうちに散髪をすんなりさせてくれるようになりました。

 自閉症があるなしに関わらず、初めての体験はいつでも不安です。その不安は体験することでしか解消していけません。触覚過敏の場合も同じで、何回も繰り返しているうちに慣れてくるという面もあります。

 障害がある人は、その体験が人よりも何倍か多く必要であるかもしれませんが、必ず受け入れてくれるタイミングがやってきます。

 苦手なことでも生きる上で避けられないことや必要なことに対しては、とにかく繰り返し経験させることが重要で、本人の様子を見ながら気長にチャレンジしていくことが大切でした。

[参考記事]
「自閉症スペクトラム障害(ASD)って何?その特徴とは」

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