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学習障害(LD)の読字障害、書字表出障害、算数障害について

 

 発達障害の中でも、特に気付かれにくいのが学習障害(LD)です。注意欠陥・多動性障害(ADHDや自閉症スペクトラム症候群のように、他の人からも一目でわかる症状ではないのがLDの最大の特徴です。多動があるわけでも、コミュニケーションが良くないわけでもなく、そのため、本人も周囲も学習障害(LD)であることを見過ごしてしまいがちなのです(ただし、LDはADHDなどの他の発達障害と合併をしていることがあります)。

 今回は、発達障害の中でも特に理解されにくい学習障害(LD)の特徴や症状を紹介します。学習障害とは、Learning Disability(学びに関する困難や不自由)を和訳したもので、LDと略されるのが一般的です。学習障害(LD)には大きく分けて3つのタイプが存在しています。

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読字障害(ディスレクシア):読みの困難

 読字障害(ディスレクシア)とは、文字を正確に認識する機能に障害があることをいいます。目から入ってきた情報(文字)が脳に正確に伝わらないために、以下のような症状が現れます。

・似たような形の文字の区別がつきにくい(「わ」と「れ」、「心」と「必」など)

・鏡文字のように見える(「さ」と「ち」など)

・文字がぼやけて見える

・文章内の区切れ目が分からない
 「にはにはにわにわとりがいる」の区切りは一般の人でも分かりにくいですが、「庭には二羽、ニワトリがいる」という意味です。これは極端な例ですが、このように文章のどこを区切ったらいいのかが分かりにくいのです。

読字障害(ディスレクシア)の世界

 「れたレほさょラもけしさてす。」。この文章、なんて書いてあるか読めますか?

 正解は「わたしはきょうもげんきです。(私は今日も元気です。)」ですが、ディスクレシアの人たちは「わ」が「れ」に見えてしまったり、「し」が「レ」に見えてしまったりするのです。

 大人でも、全てひらがなやカタカナで句読点もなしに書かれた文章は読みにくいですよね。それがさらに鏡越しに書かれているのを想像してみてください。集中して時間をかけたり、文脈や語彙から内容を予測して補ったりしながらだったら読むことが出来るでしょうが、それってとっても疲れますよね。

 まだ発達途上にある子供にとっては、私たち大人が想像するよりもずっと大変な事なのです。文字を読み取ることにばかり神経を集中してしまうため、結局文章が何を言っているのかまで気が回らなくなってしまうのも分かる気がしませんか?

 上で例として挙げた文章が文字ではなく音声ならば、読字障害(ディスレクシア)の人たちは何の問題もなく理解することが出来ます。しかし、ほとんどの情報を目からインプットしなければいけないのが勉強。そのため、特に「成績不良」とみなされやすくなってしまうのです。本人にとっても勉強がとても苦痛になるため、学習意欲自体が低下したり、「自分は理解力がない」と劣等感を持ってしまったりするのです。

書字表出障害(ディスグラフィア):書きの困難

 読字障害(ディスレクシア)は情報のインプットに機能障害が起こった結果もたらされますが、書字表出障害(ディスグラフィア)はその逆。アウトプットに障害があるケースです。自分では「ぬ」と書いたつもりでも「め」になってしまっていたり、「さ」と書いたつもりでも「ち」になってしまったりします。

 また、1マスの中に文字を収めることが出来なかったり、ひらがな・カタカナ・漢字を正しく使い分けることが出来なかったりします。なかには、書字表出障害(ディスグラフィア)の原因が読字障害(ディスレクシア)からきている場合もあります。

 実感をしていただくために紙とペンを持って鏡越しに文字を書いてみてください。文章は先ほどと同じ「私は今日も元気です。」にしましょう。制限時間は10秒です。いかがですか?普段と同じ速度、文字の大きさ、丁寧さで正しく書くことはできましたか?これが書字表出障害(ディスグラフィア)の人たちが生きている世界です。これをテストなどの時間制限と緊張のある環境下で行うのは相当なストレスになりますよね。

算数障害(ディスカリキュリア):算数、推論の困難

 数字や記号などの概念を理解するのに困難を覚えるのがこのタイプです。例えば、「りんごが5個書いてあるイラスト」と「数字の5」が同じであるということを結びつけることが出来なかったり、「10と100のどちらが大きいのか」が概念として理解できなかったりします。また、数字の10は理解できていたとしても、それが別の形(グラフなど)になると10だと認識できなくなるケースもあります。

 数学は、最初は具体的な対象(ネコが5匹など)から始まりますが、徐々にx/yなどの抽象的な推論の世界に入っていきますよね。おそらく数学が得意ではない多くの人が、中学や高校から苦手意識を持つようになると思います。それは、この抽象化・概念化が直感的に理解できないからです(私もそうでした)。「αやθを具体的な数字に置き換えると理解できるけど……」ということはありませんでしたか?その時のことを思い出してください。算数障害(ディスカリキュリア)の子供たちは、それが「ぞうが1匹」の段階から始まるのです。

 そして、算数障害(ディスカリキュリア)に書字表出障害(ディスグラフィア)や読字障害(ディスレクシア)が併発しているケースも少なくありません。

 他の発達障害と同様に、学習障害(LD)も脳の機能の一部に問題があるのであって、知能自体に遅れはありません。しかし、学習の基本である「読み・書き・計算」の脳内処理方法に困難を抱えているため、「勉強ができない=知能に問題がある」と本人も周囲も誤解してしまう場合がほとんどなのです。

子供自身もうまく症状を伝えられない

 学習障害(LD)も、他の発達障害と同様に先天性の障害ですから、学習障害(LD)の子供にとっては学習障害(LD)の世界が「普通」です。そのため、何がおかしいのか、分からないのかを自分でも把握することが出来ません。これまで生きてきた数年間に見えたものが、他の子とは全く違うのだということに気付くことなど不可能だからです。

 さらに、年齢的にも語彙や表現力が十分ではないことも、学習面での困ったことを自分でうまく伝えることの困難さに拍車をかけている一面もあります。学習障害(LD)は特に認知度が低いため、親や教師は「この子はどうしてこんなにも勉強ができないのだろう?」と困惑と落胆を示すばかりで、真の原因までたどり着くことが出来ないケースがほとんどなのです。

学習障害(LD)が引き起こす二次障害は?

 学習障害(LD)は当然ながら精神疾患ではありません。しかし、学習面でのつまずきがきっかけになり学校生活自体に適応できなくなることは決して珍しくありません。とりわけ集団での活動が多くなる小学校低学年のうちは、ほとんどすべての活動が勉強と結びつけられています。そこでクラスのテンポに合わせられないことは、学校生活全体に困難さを及ぼすことになるからです。

 学習障害(LD)と学習能力は無関係であるにも関わらず、授業でのつまずきによって、本人も「自分はダメな子」と思い込んだり、学校生活そのものがストレスになったりしてしまいます。その結果、うつ病や適応障害、パニック障害などの精神疾患を二次的に発症してしまうリスクが非常に高くなるのです。

 人格形成期に精神疾患を発症してしまうと、成長に特に大きな影響を及ぼします。それを防ぐためには、とにかく早期に学習障害(LD)に気が付いてあげることが重要なのです。子供の「わからない」を安易に受け流さず、真剣に話を聞いてあげることが何よりも大切になってきます。ここで気づいてあげられないと怠けていると思って、「もっと勉強しなさい」と怒ってしまうことになりかねず、そうすると子供の心は大きく傷付きます。

[参考記事]
「息子の学習障害(ディスレクシア)に気づいたきっかけは授業参観」

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