この記事は自閉症専門のサッカースクールのコーチに書いていただきました。
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こんにちは。私は、現在自閉症を持つ人達の為のサッカースクールにてコーチをしています。今日は、実際にサッカースクールでコーチをしてみて私が体験した体験談を共有したいと思います。
現在サッカースクールには、小学一年生から28歳までの生徒が在籍していて、毎週土曜日に地域の盲学校のグランドを借りてサッカーを楽しんでいます。
サッカースクールは障害の重さでは無く年齢別でそれぞれ小学生低学年、小学生高学年、中学生そして高校生以上の4つのカテゴリーにそれぞれ分かれています。
自閉症を持つ人達を指導するうえで心掛けていることが3つあります。そこで次の章ではどの様な事を心掛けているかを紹介します。
自立できる環境を作る
一つ目は、自立できる環境を作る事です。自閉症のみならず、障害のあるお子さんをお持ちの親御さんが心配している事の一つが「自分」が死んでからの子供の生活だと思います。
実は私にも障害者手帳を持つ叔母が一人いて、叔母の母親にあたる私の祖母がよく「私が死んだらきみ子(叔母の名前、仮名)はどうなるんだろう」と心配しています。またスクールに在籍する保護者の方からも同様の悩みを頻繁に相談されます。
ですので障害のある人達が最大のサポーターである両親を失った後でも、自立して生活できる為に自立性を身に着ける事が出来る環境作りを心掛けています。
例えば、スクールで使った道具を私達コーチが全部片づけてしまうのでは無く、子供達と一緒に片づける事で自分が使ったものは自分で片づけるという自立性を身に着ける取り組みを行い、
また指導する際も子供達に対してすぐ答えを与えるのではなく、「どうしたらいいと思う?」などと聞き、自ら考える機会を与えています。
障害があるから仕方が無いは正しい考え?
二つ目の点は、自閉症児に対して「障害があるから仕方が無い」という考えを捨てること。日常生活にて、障害のある人が何か困っていたり、あるいは問題行動を起こしてしましょう。その時多くの人が「障害があるから仕方がない」と思うかと思います。私もスクールを設立した当初はそう思っていました。
しかし、スクールを立ち上げて数年たったある日、当時小学6年生の男の子に学校生活について尋ねた際、彼は私に「なんかみんなと違う扱いをされるのが悲しい」と私に訴えてきました。
「障害があるから、、、」などと言って擁護するのは一見善い事に思えます。しかし実際は必ずしも障害のある彼等が望んでいるとは限らないのです。それ以来、「障害があるから仕方が無い」では無く、障害がある上でどのようにすれば「仕方が無い」状況を打開できるかを考えるように心掛けています。
それぞれの生徒の特徴を理解する
三つ目は、生徒の特徴をしっかりと理解する事です。一概に「自閉症」といっても、生徒それぞれに特徴があり、例えば低学年のクラスには大きい音が苦手な子がいる一方、高学年のクラスには大きい音が大好きな子もいます。
また、中学生のクラスにはドリブルの練習にひたすらこだわってやり続ける子もいますし、大人のクラスでは人に囲まれるのが苦手という人もいます。
この様に、同じ「自閉症」という障害を持っていたとしても、一人一人に苦手な音や物などが当然あり、それらを出来るだけ理解し、それぞれに適合した教え方を心掛けています。
例えば、大きい音が苦手な子がいたら笛を使わずに指導したり、またドリブル練習をひたすらやり続ける子にはドリブル練習の一部にパスやシュートなどのドリブル以外の技術も取り入れたドリブル練習を作ります。人に囲まれるのが苦手な人には一人でできるような練習を行います。
このように、それぞれの特徴を把握する事で、個人個人に適した練習が行える為、生徒それぞれの特徴を理解するように心がけています。
まとめ
以上、私が実際に自閉症のある人達の為のサッカースクールを運営するうえでの体験を書いてきました。
「自立できる環境を作る」「障害があるから仕方が無いで済ませない」「生徒それぞれの特徴を理解する」といった3つの心掛けは、一見サッカースクールでしか当てはまらないと思うかもしれません。
しかし、実際はその他の教育現場や、ご家庭でも当てはまると私は思います。私の体験談が、読者の皆様のお力に少しでもなる事を祈っています。
[参考記事]
「自閉症のお子さんの習い事。サッカースクールの事例」