私は発達障害

発達障害とがん ― 近年注目される「見えにくい健康格差」

発達障害(ASD:自閉スペクトラム症、ADHD:注意欠如・多動症、LD:学習障害など)を持つ人々の健康については、これまで精神面や社会生活に焦点が当てられることが多くありました。しかし近年、身体疾患、特に「がん」との関連性にも注目が集まっています。

複数の国際研究で、発達障害を持つ人はがん検診の受診率が低く、診断が遅れる傾向があることが明らかになっており、その結果、重症化や死亡リスクが高まるケースもあるとされています。ただし、「がん検診の頻度」と「がん死亡率の減少」の相関性が限定的な癌もありますので一概には言えない面があります。

本記事では、医学的エビデンスをもとに、発達障害とがんの関係をわかりやすく解説します。


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なぜ発達障害の人はがんリスクが高くなるのか?

① 健診・検診の受診率が低い

発達障害を持つ人は、病院や健診の場に不安を感じやすく、医療従事者とのコミュニケーションにも困難を抱えることがあります。
そのため、がん検診(乳がん・子宮頸がん・大腸がん・胃がんなど)を定期的に受けない傾向が指摘されています。

また、検査中の感覚過敏(音・匂い・触感など)や、手続きの複雑さが「受診のハードル」となり、結果として早期発見の機会を逃すことがあります。

② 生活習慣・ストレスの影響

発達障害のある人の中には、

これらはがん発生のリスク要因(ホルモンバランスの乱れ・免疫低下・慢性炎症)に関与していると考えられています。

③ 医療アクセスと社会的要因

発達障害を持つ人は、医療機関の受診を支える家族や支援者がいない場合、通院の継続が難しくなることがあります。
また、雇用環境や経済的格差も、がん検診・治療を受ける機会の不均等につながっています。


国内外の研究が示すデータ

2023年にスウェーデンで行われた大規模調査では、ASD(自閉スペクトラム症)を持つ成人のがん発症率は一般人口とほぼ同等である一方、がんによる死亡率は有意に高いことが報告されました。
これは「発症率」よりも「早期発見・治療率」に差があることを示唆しています。

また、アメリカやイギリスの報告では、発達障害のある人はがん検診受診率が20〜40%低いというデータもあります。
特に女性の場合、乳がん・子宮頸がん検診の受診率が低く、早期発見が難しい傾向があるとされます。

日本国内でも、発達障害当事者や家族から「病院に行きづらい」「医師に症状をうまく伝えられない」といった声が多く、医療アクセスの格差が課題となっています。


がんリスクを減らすための生活習慣とサポート体制

① 食生活の見直し

野菜・果物・魚をバランスよく摂取し、加工食品や糖質の過剰摂取を控えることが重要です。
特に、ビタミンD・オメガ3脂肪酸・食物繊維の摂取は、免疫力維持と炎症抑制に役立ちます。

発達障害による食の偏りがある場合は、管理栄養士のサポートを受けるのも良い方法です。

② 睡眠とストレス管理

慢性的な睡眠不足やストレスは、ホルモン分泌を乱し、がんの発症リスクを高める可能性があります。
就寝環境を整え、リラックスできる習慣(入浴・軽運動・静かな時間)を持つことが大切です。

また、認知行動療法(CBT)などの心理的支援も、ストレス軽減に有効とされています。

③ 検診・健診を受けやすくする工夫

市区町村のがん検診では、発達障害の人向けの配慮(静かな待合室、予約制、事前説明)を提供している自治体もあります。
家族や支援者が同行することで、検査の不安を和らげることも可能です。

また、かかりつけ医を持ち、健康状態を定期的にフォローしてもらうことが早期発見につながります。


医療現場が取り組むべき課題

発達障害のある患者が適切ながん検診や治療を受けるためには、医療従事者側の理解と環境整備も欠かせません。

これらの工夫により、発達障害のある人が安心して医療を受けられる環境を整えることが重要です。


まとめ:発達障害のある人も「がん予防」と「早期発見」が可能

発達障害を持つ人ががんになりやすいのは、体質よりも環境・医療アクセス・生活習慣の問題が大きいとされています。

そのため、

発達障害があっても、適切な支援と工夫で、がんの早期発見・予防は十分に可能です。
一人ひとりに合った医療体制の整備こそが、今後の社会全体の健康格差を減らすカギとなるでしょう。

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