この記事は「アスペルガー症候群の私は会話が苦手で、想像力が弱い」の続きです。
大学生になって
勉強はやればできる方だったので、私は薬科大学に合格しました。小さい頃から薬は大好きで、お菓子を薬に見立てて遊んでいました。アスペルガー症候群をはじめ自閉症スペクトラム障害の人は興味がない分野は集中力が続かなくてできません。しかし、薬が好きだった私は薬科大学に入るという目標ができたために、受験勉強も進んでするようになりました。
しかし、一転大学生になった私は、まったく授業を聞かずに関係のない本ばかりを読んでいました。薬に対しての興味がなくなってしまったのです。テストの期間に入ったのですが、授業を聞いていないので全然分かりません。試験範囲がものすごく長かったのです。きちんとした成績を取らないと留年してしまうと聞いて、私は勉強しなくてはいけないのだと生まれて初めて思いました。留年したら、数百万円もかかってしまうのです。そんな中、長すぎるテスト範囲を前に私は呆然としましたが、とにかく全部覚えないと、と実際泣きながら勉強しました。発達障害のない普通の人でも興味がない分野を勉強していると苦痛でしょうが、私はアスペルガー症候群ですので、さらにその上を行っています。
それ以来、心を入れ替えて授業を聞いたのですが、興味がないので集中力が続かず本当にまったく分かりませんでした。しかし、少なくとも、先生が線を引くようにと言われたものや、プリントなどを手がかりにしてテストはなんとか合格。ヘトヘトでした。こんな状態ですので、大学は3分の1休んでも大丈夫だと聞いてからは何日休めるか計算して適当に授業に出たり休んだりしていました。
人間関係を頑張ろうとしていた大学時代
大学何年生かは覚えていないのですが、少なくとも3年生よりも前に、声をかけてくれた子が2人いて、お昼ご飯などは3人で食べたりしていました。私はなんとか頑張って話に加わろうとし、繋がりは拙いながらも一緒にいることができました。一緒に旅行もしたのですが、その時に撮った写真の私は、全然笑えていませんでした。写真を撮られることに慣れていなかったのも理由のひとつですが、今から思えば、必死に仲間になろうと努力をしていただけで、全然楽しくなかったからでしょう。
薬科大学には、実験の授業があり、人と協力して行う必要がありました。2人1組での実験でしたが、先生の指示の通らない私は、何をしたらいいのかまったく分からず、相方がいつ怒るかびくびくしながら実験を行っていました。けれど、相方は頭がとてもよく、実験も全部ひとりでやっていました。私が何もしないことは、彼にとっては特にマイナス事項にはならなかったようです。
アスペルガー症候群の性質から昔から人間関係は苦手ですが、このように大学になってからも健在です。
そして授業がまったく分からないままでしたが、なんとか2年生になり、どうやって授業を聞いたらいいのかを自分なりに考えていたのですが、何も思い浮かびませんでした。ところが大学3年生になって、いきなり状況が変わったのです。
大学3年生で超能力開眼~これもアスペルガーの特徴?~
3年生になって私はいきなり開眼したのです。開眼というのは、授業のことです。2年生までまったく分からなかったことが、春休みを終えて3年生の授業を聞いた瞬間、授業の聞き方が分かっていたことに気づいたのです。
何か自分なりに授業の聞き方を考えて編み出したとかそのようなことではなく、いきなり「授業の聞き方」が知らないうちに頭にインストールされていた感じです。むしろ、なぜ今までの授業が分からなかったのかも分からないくらい、当たり前のように授業を聞いていました。先生の難しい内容の授業も、なぜかちゃんと理解して、教科書には載ってないものはメモをして。教科書さえ見れば、ノートなんて見なくても大丈夫なようになっていました。
いきなり分かるようになった私に気づいたのか、友達が私に、「ねえね、さっき先生なんて言ったの?」と先生の授業の話が途切れた瞬間を狙って訊いてきました。そこで私が先生の言ったことを分かりやすく説明したら、彼女はひたすらそれをメモしていました。それもきっと、私の理解を深める一因となったのでしょう。
テストの勉強をしないといけない日、「よし、1時間だけ勉強しよう」と教科書を眺めた私は、頭の中に、その授業風景と先生が言った冗談までが録画されていているかのように入っていて、それを頭の中で再生できることに気づきました。
すべての科目においてそのような感じでした。私はぺらぺらと教科書のページをめくって、授業で習ったことはすべて映像として何から何まで覚えていて、ただ頭の中の再生ボタンを押して確認するだけです。次の日の科目の予習という名の録画作業は、勉強を始めて30分も経たないうちに終わりました。教科書をぺらぺらめくるだけですから。カメラアイというのはよく聞きますが、その時の私がやっていたのは、カメラアイ+ビデオアイとでもいうのでしょうか。超能力と驚く人もいました。
実はアスペルガー症候群をはじめ自閉症スペクトラム障害の人の中には、私のように物事を映像や画像として頭に記憶できる性質を持つ人もいます。これは視覚が優位な性質によるものだと言われていますが、まだ確かなことは分かっていません。
勉強というのはやはり一時間はやるものではないだろうか、と思った私はなんと、教科書に書いてあることを丸暗記する作業に移りました。すべて丸暗記することはできなかったのですが、できなかった理由は、一時間も絶つと、それで満足してしまったからです(恐らくやればできたと思っています)。教科書を丸暗記するなんて、なんの意味もないことは分かっていたのですが、何もすることがなかったので、とりあえずやってみただけなのです。
案の定、テストではとてもいい点数をとりました。自分でも不思議に思ったことは、テストの内容で、教科書には書いてあったことは覚えているけれども、授業ではやらなかった問題が出た時です。ちょっと困った私がやり始めたことは、頭の中の映像の中で、教科書の端の方に書いてあったけれど意識して見てなかった個所をズームインしたのです。小さく書いてあったので、ちょっと映像の視点をその場所にずらして、何度かズームイン。そしてそこに書いてあったものを見て、答えを書きました。これはさすがに自分でも驚きました。こんなこともできるんだ、と。
やはり、超能力だろうか(笑)
ビデオアイは、働き始めたころにも役に立ちました。薬のメーカーの人が新薬の勉強会を開くのですが、なんと私は、その勉強会に出席してなかった人に、細大漏らさずにその内容を説明を始めたのです。ビデオを再生するように、製薬メーカーさんが言っていたことと、まったく同じことを彼女に伝えました。とても感謝されたのですが、他の薬剤師に、「普通は自分の言葉に置き換えて覚えて、教えるならそういうのを教えるんだけど、あんたは全部そのまま覚えてるんだね」と言われました。
また、勉強会でやった内容に限らず、意味がないと感じた情報は頭の中で「消去消去」と唱えると忘れることができます。忘れたかどうかは確認をしていないので分からないのですが、少なくとも1週間後くらいには頭のビデオの中には残っていませんでした。これが頭の中の録画を消す方法です。唱えるだけ(笑)
話は大学時代に戻ります。テストの前にプリントを13枚くらい渡す先生がいたのですが、私は前日にはそれはやらずに、当日の電車の中で13枚のプリントを見て(覚えているのではなく見る)、試験に挑みました。プリントには書いてなかった、という問題以外はすべて正答しました。
私は毎回、何百人かいるうちの中で必ず一桁の順位を保っていました。3年生以降、私は勉強や試験に困ることなく、最終的には、「そんなに漫画ばっかり読んでて国試と卒試受かったら怒るからね!」と友達に言われました。その人は、推薦で大学に入ったので、試験は受けてなかったのです。可愛そうなことに、毎回ものすごく頑張って勉強しているのに、毎回成績が悪く、何度も再試を受けていました。国試も卒試も受かるんだろうか?という人でした。結局受かったのか落ちたのかは分かりません。大学時代で知り合った人で、今でも連絡を取り合っている人は誰一人としていなかったので。アスペルガー症候群による「カメラアイの超能力」と引き換えに人間関係の能力は全くダメ(笑)
続きは完成次第掲載します。