今日は、発達障害の診断に用いられる『WAIS‐Ⅲ(ウェイススリー・ウィスクラ―成人知能検査』をなぜ自分が受けに行ったのか、また発達障害(ADHD)と診断を受けた当初の気持ちについて書きます。
大学生の頃、飲食店のアルバイトで躓いては辞める、ということを繰り返していました。アルバイトに行くことは、自分にとって「命がけ」。それくらい必死でやっていたのに、なかなか上達せず、仕事が続かない。また仕事の覚えがとっても悪く辛い思いをしました。
そんなある日、解決策を探すため、「バイト 要領が悪い」とインターネットで調べてみました。知恵袋サイトに寄せられた「要領が悪く、仕事を覚えられない。メモを書いてもすぐ忘れて真剣に悩んでいる」という質問に、「メモを取らないからだ」「真剣さが足りない」「仕事に対する考えが甘い」そんな辛辣な回答が続くなかで、「発達障害じゃないか?」という回答がありました。「友達がすごく悩んでいて、病院に行ったら発達障害といわれたそうで…」と。
努力不足だけが原因ではなかった
私は、初めて発達障害というワードに出会いましたが、読んだ瞬間、これだ!!と思いました。「ASD(自閉スペクトラム症)」「LD(学習障害)」「ADHD(注意欠如多動性障害)」という発達障害の分類の中でも「ADHD」に当たるのだろうなぁと色々調べたことで確信しました。
「物をすぐ置き忘れる」「おっちょこちょい」「不注意」これらの症状が幼少期から続く…!「あっ私はこれだ!」と。小学生のころから忘れ物が多く、テストでの凡ミスも多かったですから。
大学のカウンセリング室に相談に行き、他大学の心理センターを紹介してもらいWAIS‐Ⅲを受け、その後精神科に行きました。検査結果を見ると、
絵画完成(視覚刺激に素早く反応する力・ 視覚的長期記憶を測る)
絵画配列(結果を予測する力・ 時間的な順序の認識、時間概念を測る)
積み木模様(全体を部分に分解する力・ 非言語的な概念を形成するカを測る)
という項目がやけに低かったのです。
担当者が一言。「この結果を見る限り、飲食業・接客業は本当に辛かったでしょう」。そう言われて、私は思わず泣いていました。そして、検査結果をみて、「凹」の部分が明確にわかり、「努力不足だけが原因ではなかった」と分かり、やっと救われた想いになりました。同時に「障害」というワードが重く肩にのしかかりましたが…。
具体的な対策がわかったという利点
「曖昧な指示を把握するのが苦手」「指示する人が複数人いると混乱するから、司令塔は1人の環境の方がいい」そう言われました。また、「車の運転は止めた方がいい」とも言われました。
大きな発見だったのは、検査の1項目である『絵画完成』の点数が低いがために、「コップが人数分足りていない」などといった状況に、見てすぐには気がつかないかもしれないと言われたことです。「ただし、経験で今後少しずつ獲得していくことは出来ます!」とのことで、安心しました。「必死で見ているのに気づかない」と思っていたことを、まさに言われたので驚きました。
前に進むことができてよかった
診断後は、アルバイトの種類を変えました。司令塔は「店長」一人である、住宅展示場の受付・呼び込み業務。また、派遣という形態で、各量販店での携帯電話宣伝のMCをしていたときは、困ったら派遣元の責任者一人に聞けばよかったので、安心できました。
苦手としていた「広い場所を見渡してとっさの判断をする」「臨機応変に仕事をする」「様々な人から異なる指示を受ける」ことが無くなり、発達障害の特性的に楽に働けるようになりました。結果、アルバイトの種類を変えてから自己肯定感は少しずつ上がりました。
そして、やはり「ダブルブッキングをする」「失くしものをする」「意識はしていたのに気が利かなかった」などで人に迷惑をかけた場合に、悔しくて泣いてしまうこともまだありましたが、それは「自分の中でとても苦手なこと」なのだと言い聞かせました。自分を責めすぎるのをやめよう、と少しずつ思えました。
「ああまたやってしまった」と悔いながらも、それで終わったのではなく、「じゃあこれからどうやって工夫をしよう?」といった「一歩先の視点」に少しずつ変わりました。だから、私にとって、「診断を受け、得意不得意が分かった」ことは、大変プラスになった経験でした。診断を受けてよかったと心から思います。