私は発達障害

発達障害の息子は触覚過敏。着ることができる服が少ない

 

 この記事は30代の女性に、発達障害の息子さんの感覚過敏(触覚過敏)について書いていただきました。

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 息子は発達障害の診断を受けていますが、感覚過敏の症状が現れています。感覚過敏は総称であり、聴覚過敏、視覚過敏、触覚過敏、味覚過敏、嗅覚過敏に分けることができます。息子は大きな音やまぶしい光も苦手ですが、一番苦手なのは「感触」です。

 自分から人に触る事は出来ますが、突然人に触られたりするととたんに不機嫌になります。以前、私の体調が悪く椅子に腰かけていた時に心配してくれる素振りを見せてくれたので「大丈夫だよ。心配掛けてごめんね。」と頭を優しくなでるとそれまで穏やかだった息子の表情が一変し、髪の毛を抜きながら泣き叫びだしました。「あれ?この子触られるのこんなに苦手なの?」と私が息子の触覚過敏を意識した瞬間でした。

 思い返せば新生児期から肌が触れ合う事を極端に嫌がり、抱っこ、オムツも拒否して、いつも上半身のみ衣服を身につけている状態でした。現在では少し改善されてきているので人に触られても癇癪を起こす事はほとんどなくなりましたが、まだまだ身につける服には配慮が必要なレベルです。

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偏食

 触覚過敏と言えば衣服に対するイメージをする方が多いと思いますが、息子は口腔内も過敏です。そのため離乳食が完了する時期になっても固形物を食べる事が出来ず、2歳まではお粥、うどん、指で潰せる固さに煮込んだ大根、バナナ、豆腐等のど越しの良いものばかりを好んでいました。

 2歳を過ぎた頃、「魚は歯に挟まるから食べたくない」と自分で訴えるようになりました。食卓に爪楊枝を常備して「歯に詰まったらすぐに取ってあげるから食べてごらん?」と促すと、あんかけのようにとろみをつけて煮た魚を少しずつ食べられるようになりました。

 息子はもうすぐ4歳になりますが肉等の繊維質の多いもの、口の中でまとまりずらく飲み込みにくいものは今も食べる事ができません。フライも「口の中が痛いから」と好んで食べる事はありません。食べられる食品はだいぶ増えてきましたが、家庭では「指で潰せる固さ」に全て調理しているため、幼稚園で出される硬い食品はほとんど残しています。

 もし、自分の子供が偏食している場合、発達障害の可能性もありますので、早い発見に繋がるかもしれません。もちろん、偏食=発達障害ではありませんが、知識として知っておくだけでもいいと思います。

服が着られない事に対する自己肯定感の低下

 やはり、触覚過敏の子供が最も苦労するのは服でしょう。息子は締め付けられる素材や固い生地は苦手なため、市販のズボンをほとんど履く事ができませんでした。そのため自宅にある古着から柔らかい素材を選び、息子の身体に合わせて、私がズボンを作って履かせていました。

 息子の触覚過敏は首周りから顔、頭にかけてかなり強く見られます。そのため襟ぐりの詰まった服は着る事ができません。大きめのTシャツ、ロンTの襟を切って「常に片方の肩が出ている状態」でないと苦しくて仕方がないそうです。

 寒い時期にはロンTの下に綿のシャツを着用するお子さんも多いと思いますが、息子は重ね着の感覚も苦手なようで、シャツを着る事ができません。幸い上着は着る事が出来るので暖かいものを着せていましたが、それでも上着を脱ぐと薄手で襟ぐりの切られたロンT1枚。合う人会う人毎回「こんな格好で寒くないの?」と冬は必ず聞かれます。

 とある療育施設で息子がいつものように襟ぐりの空いた服を着ていた時の事、同じく通っている女の子に「なんでそんな変な服着ているの?」と聞かれました。母子分離の施設だったため、私はその事を知らず、療育施設からの帰り道、自転車に乗って小さな手をぎゅっと握って涙を浮かべる息子からその話を聞きました。「おかあさん、この服変なの?」と。

 私は「決して変なわけではないよ。世の中には肩を出したい人と肩を出したら寒い人がいる。それだけの事だよ。東京にも北海道にも肩を出している人はたくさんいるよ。」と息子に伝えることしかできませんでした。しかしそんな言葉では一度無くした自己肯定感は取り戻せません。息子は落ち込み続け、そんな息子を見て私は悩みました。発達障害による性質のせいで、将来に渡って心にダメージを負う可能性があるので、今のうちにどうしたら自信を取り戻せるのかを考えました。

一緒に変な服着て、おシャレになろう

 息子が首周りが苦しくて肩を出したいのなら、私も出せば良いのでは?と考えました。美意識の高まる世の中、親子でお揃いのお洋服を着てお出かけしている人も多いです。息子とおそろいのボーダーの服を購入し、思い切って私も襟ぐりを切って着てみました。そして知り合いに会う時は必ずその服を着て行って「2人合わせて褒めてもらう」ように事前に頼みました。

 その効果はてき面でした。もともと「お母さんが自分の全て」という息子です。大好きなお母さんと一緒の服を着て褒められる事で少しずつ自信を取り戻してくれました。周囲の方の協力のおかげです。

 「お洒落だね!」「お揃いにしたの?」「うちも今度真似してみようかな!」とこれまで息子を見て心配する声掛けとは打って変わって褒める言葉を投げかけてもらうことにより、息子はあまり服の事を気にしなくなりました。毎日同じ服を着て出かける事は出来ないので、2人でお揃いの肩を出した服でプリクラを撮ってキーホルダーにして持ち歩いたりもしています。

触覚過敏の改善

 触覚過敏に限らず、感覚過敏は治すものではなく慣れるものだと以前通っていた発達障害の専門医に言われた事があります。

 慣れるまでには工程があり、
①自分が「普通の感覚」が苦手だと自覚する
②周囲はその普通の感覚を受け入れている事を知る
③周囲と同じ「普通」でいるために、我慢や慣れる術を考える

 このプロセスを踏まないと感覚過敏を改善する事は出来ないと教わりました。

 息子にはまだまだ難しい課題だと思いましたが、幼稚園の制服であるワイシャツは着られるようになりました。それだけ「周囲に合わせたいという意識」が高まった結果、我慢して着る事が出来たのだと思います。降園後、首周りを真っ赤にして帰ってくることもあります。気になって掻きむしっているせいでしょう。

 しかし、これはそれだけ息子が普通でいようと頑張っている証拠なのでしょう。そんな時はすぐに楽な格好に着替えさせ「今日もよく頑張ったね。お帰りなさい。待ってたよ」とたくさん甘えさせてあげています。

 まだまだ触覚過敏を中心とした感覚過敏に悩む事は多そうですが、息子のペースで少しずつ慣れていけるようにサポートしていきたいです。

[参考記事]
「自閉症による聴覚過敏により泣き声が嫌いな娘」

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