広告

Read Article

自閉症による聴覚過敏により泣き声が嫌いな娘

 

この記事は自閉症の娘さんを育てている親御さんに書いていただきました。娘さんは人の泣き声が嫌いな聴覚過敏を持っています。その娘さんの現状について書いていただきました。

…………

 私の6歳になる娘は4歳の時に「軽度の知的遅れがある自閉症」と診断されました。赤ちゃんの頃は首の座りや歩くのも遅く、意味のある言葉を発したのは2歳10ヶ月の時でした。

 1歳を過ぎた頃から未就学児が集まる広場などに遊びに行っていましたが、他の子と何かが違うと感じていました。周りの子とコミュニケーションを取ろうとしないで一人遊びしていることに違和感を感じていました。

 それでも、やっと言葉が出始めたので大丈夫だろうと信じていましたが、インターネットで検索してみると、娘の性質が自閉児の行動に当てはまるものばかりで愕然としました。例えば
〇言葉を発しない
〇クレーン現象
〇逆手バイバイ
〇人と目線が合いづらい
〇話すようになってからはオウム返し
〇音を嫌がる(聴覚過敏)

 診断を受けた時は、「やっぱりそうだったんだ」と悲しみにくれました。

広告

聴覚過敏

  自閉症児には、よく感覚過敏(視覚、聴覚、触覚、味覚に対する過敏性)が見られますが、娘はその中の聴覚過敏です。変だなと感じた初めのきっかけは玩具でした。赤ちゃんの時にラッパの玩具を買い、早速我が子の前で吹いてみましたが、今までご機嫌だった我が子が突然泣き出しました。これは何回繰り返しても同じ結果でした。今思えば、何てかわいそうな事をしていたのだろうと思います。

 また、2歳で保育園へ入所させてからも、 他のお子さんが泣き出すと、必ず一緒になって、しくしく泣いていました。健常児であれば、つられて泣き出したのだろうと思うでしょう。しかし、我が子はテレビやアニメの登場人物が泣いても、必ず一緒になって泣いていました。泣き声の音程が耐えられないようです。これは聴覚過敏だと確信しました。一般の人でもガラスを引っ掻く音は嫌いですが、これが日常の音でも強く感じてしまうのが、聴覚過敏です。

 聴覚過敏の原因は三重大学の研究によれば「脳の神経伝達に障害があり、音が脳に過剰に伝わってきてしまうこと」です。つまり、意識して聴覚過敏を止めることはできないということです。

三重大学(津市)は十三日、聴覚過敏を併発した自閉症患者を確認する問診方法として、音がやってくる方向の認識能力の有無が有効であると発表した。診断方法の確立されていない自閉症で「科学的根拠のある問診」と強調。また、この問診方法を見つける過程で、聴覚過敏の原因は音の伝達経路の障害にあることを世界で初めて解明した。

発達障害の一つである自閉症は、先天性の脳機能障害で、コミュニケーションがうまく取れない、行動や興味が偏っているなどの症状がある。患者の中には、人の声や室外機の音など特定の音に対して敏感に反応する聴覚過敏を併発する人が一定数いるが、原因は解明されていなかった。

左右の耳から入った音の情報が集まる神経の集合体部分で、音の信号を抑制する神経経路に障害が見つかった。「信号が脳に過度に伝わるため、興奮しすぎてしまう」と考え、聴覚過敏の原因は神経経路の障害と判断した。

三重新聞より引用

現在の聴覚過敏の様子

 6歳になった現在、聴覚過敏はどうなったかというと、継続しています。小さい頃よりは幾らかは改善してきたかと思います。改善してきたというよりは、本人が対処の仕方を学んできたといった方がいいのでしょうか。例えば耳を塞いだり、嫌な音が出ている部屋から出る、大好きな本に没頭する、などすると大丈夫になりました。テレビやアニメで泣くシーンを見ても泣かなくなりました。

 しかし、保育園で誰かが泣き出すと平常心を保ってはいられません。泣き声がどのように聞こえているかは分かりませんが、耐えられないようです。不安感に襲われ、保育士さんのそばを離れません。プチパニックに陥ります。そして泣いている子が、またいつ泣き出すかと、その日からずっと警戒しています。その子が近づいただけで逃げ回るようになってしまいました。保育園には娘が自閉症であることは伝えているので、一定の理解はしていただいています。

 他の音に関しては、トイレの流れる音は大丈夫ですが、手を乾かす機械に嫌悪感を示します。あれはできません。また、ドライヤーは大丈夫ですが、千円カットの髪を吸い込む機械は恐がって、髪を切らずに帰ってこともありました。

赤ちゃんの泣き声

 娘が5才の時に妹が産まれました。赤ちゃんの泣き声が嫌いなのはハッキリしていたので、産後、辛い思いをさせることは分かっていましたが、私達親が亡き後も面倒を見てくれる兄弟がいた方がいいと思い、妊娠・出産を決断いたしました。

 案の定、妹が産まれたばかりの頃は耳を塞いだり、顔を手で覆って固まったりしていました。しかし、赤ちゃんは泣くのが仕事。毎日一緒に過ごしていると、妹の泣き声は大丈夫になったのです。今では妹が泣いていると、「泣かないで~」と笑いながらあやせるようになりました。それを考えると、聴覚過敏は慣れなのかな、と思いますが、他の子の泣き声には全く慣れるといった気配はみられません。

スピーカー音に対しての嫌悪感

 我が子は泣き声だけではなく、スピーカーから流れてくる音楽にも嫌悪感を示します。例えば運動会や行事の時に流れてくる音楽や声に反応し、固まってしまって行動できなくなってしまいます。テレビで音楽番組を見ながら歌ったり、踊ったりするのは大好きなので音楽そのものの問題ではなく、スピーカーを通して流れてくる音が嫌いなのです。スピーカーから聞こえてくる甲高い声や音が嫌なのだと思いますが、どことなく泣き声と似てないこともないかなと感じます。

 運動会では、練習中から何回も音を聞かせてもらったりして慣らそうとしましたが、本番ではやはりダメでした。イアーマフ(耳に付ける防音具)の検討もしましたが、本人が嫌がるので、どうしようもありませんでした。やはり、他の子がしていないのに、自分だけがイアーマフを付けることに抵抗があるのだと思います。ただ自閉症に対して理解のある先生でしたので、ここまで対策を考えていてくれたことには感謝しています。

 自閉症による聴覚過敏はこれから一生付き合っていかなければなりませんので、少しずつ対処の仕方を身に着けていって欲しいと思っています。

[参考記事]
「自閉症の息子は聴覚過敏。聴覚過敏を疑似体験して分かったこと」

URL :
TRACKBACK URL :

Leave a comment

*
*
* (公開されません)

Return Top