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発達障害の子供に合う先生、合わない先生について

この記事は発達障害のお子さんを育てている親御さんに書いていただきました。

……….

 私には、就学直前にアスペルガー症候群(発達障害)と診断された息子がいます。主治医の方針で、本人に告知はしていません。小学校の先生以外の周囲にも言わず、普通の子として過ごしています。

 そんな息子も中学生になりました。中学受験をして本人の気に入った学校に楽しく通っています。

 この間、幼稚園・小学校・学習塾などの「先生」と呼ばれる立場の大人と多数関わってきましたが、子供との相性ははっきり分かれます。意外にも「優しい」先生と上手くいかず、「厳しい」先生と上手くいくのです。

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1「抽象的なきれいごと」を高らかに謳う教育機関は要注意

 結論から言うと、「抽象的なきれいごと」を高らかに謳う教育関係者は、自分たちの美しいイメージ以外の事例に出くわすと感情的に怒り出します。そしてトラブルにも我流を通そうとします。

 子どもが通い始めた幼稚園や、4年生で通い始めた学習塾、4年生の学校の担任の先生がそうでした。

 就園前から言葉が遅く気になる子だったので、保健所と連絡をとりつつ、幼稚園も少人数で情操教育に力を入れているところを選び、事前に打ち合わせを入念にしたつもりでした。

 ところが、初めての個人懇談で幼稚園から一方的に「迷惑なんです!」と怒鳴られ、その後毎日迎えに行くたびに「自分たちがいかに迷惑を被ったか」延々と聞かされるようになりました。かといって、私が「専門機関に行った方が良いでしょうか?」と尋ねても、「そんなの、こちらからは言えません」と関心なさそうでした。

 結局、私の判断で専門の療育機関に通い始めました。その専門機関は、幼稚園の主張に驚かれました。それは幼稚園なのに「発達障害かどうか」という正しい知識がない上に、「幼稚園に迷惑かどうか」でしか子供を見ていないことに対してです療育の先生が専門的なアドバイスをして下さるのですが、それに対して幼稚園側は気にも留めません。

 気まぐれに「自閉症って絵カードがいいんでしょう?用意しましたよ」と言い出したので、療育の先生に相談したところ「すぐ止めてください。今、言葉がたくさん出かかっているいいところなのに!」と驚かれました。それを園に伝えても、頬をプーっと膨らませて「はいはい、わかりましたよ」とふてくされる始末(幼稚園児みたいですね)。

 とはいえ、不愉快な思い出ばかりでも早期発見に結びつきましたから、その面では良かったです。

 同じ園に、私から見ても「このお子さんにも要素あるんじゃないかな?」と思うお子さんがいました。ただ、受動的なおとなしいお子さんは園にとって「いい子」であり、そのお母さんが「もしかして」と相談しても、園は「こんないいお子さんを障害児扱いするなんて!」と取り合わなかったそうです。そして、小学校の入学後に不登校になって初めて障害が分かりました。お母さんは「気づくのに遅れてしまった」と後悔されています。

 幼稚園でトラブル続きだった息子の就学には神経を使いましたが、小学校と専門機関の連携で上手くいきました。

 4年生になる直前、周囲に合わせて学習塾に通うことにしました。当時の私には中学受験に臨む覚悟もなく、補習塾と進学塾の中間の「少人数制を売り文句にしている塾」をみて、ここなら息子に向いているのではと思ったのです。

 ところが、この塾で「雑談や独り言が多すぎる」ことが問題になりました。

 その頃には私も応用行動分析などの勉強もしており、塾の先生に「問題があれば、その場でその行動を指摘して下さい」とお願いしました。何度も注意するのがご負担かと思い、家庭で「独り言注意」と厚紙に書いたカードを作って持たせました。独り言が目立ったらこのカードを提示してください、ともお願いしたのです。

 ところが、その塾の先生は、行動を注意するということをしません。抽象的な道徳的お説教や遠回しな嫌味ばかりを繰り返します。

 息子は「自分が相手を不快にさせているらしい」ということはわかるのですが、「それが何かわからない」のでだんだん混乱し、情緒不安定がどんどんひどくなっていきました。

 私は何度も「人格ではなく行動を指導して下さい」とお願いしましたが、相手は訳知り顔に「お母さんは行動行動っておっしゃいますがね、僕は子供と心と心で通じ合うべきだと思うんですよ!」と言うのでした。

 もちろん息子と心が通じ合うわけがなかったうえ、「君は人間としてどうかと思う」と言われたのに息子は大きく傷ついてしまいました。その塾はもちろん、一時は学校にも通えなくなったほど事態がこじれました(転塾したことや、学校の校長先生や養護の先生方のおかげでなんとか乗り切れました)。

 また、この4年生の時は、小学校の担任の先生も厄介な方でした。

 息子は4年生の後半には成長を見せていたところもありました。それは、癇癪を起こしても、自分で離れた場所に行って、一人でクールダウンできる場面がみられるようになった点です。主治医も、校長先生も、親も「このような場面を増やしていこう」という意見で一致していたのですが……。

 担任の先生だけが、息子が癇癪を起こすと、「ねえねえ、どうしたの?先生に理由を教えて?」とべったり張り付き、距離を取って下さらないのです。

 本人が「僕のことは放っておいてください」と訴えても(「クールダウンさせて欲しい」という意味なのですが)、その先生は「ううん。先生、君のこと放ってなんかおかないよ」とべったり。放課後、家庭への報告で、さも「いいこと」をしましたよとドヤ顔をされ、こちらは徒労感で困惑するばかり。

 校長先生も頭を抱えていらっしゃいましたが、この年度についてはあきらめざるを得ませんでした。

2.「厳しくブレなく、ぶっきらぼうなくらい」が向いていた

 4年生の夏に、先述の学習塾を辞めました。そして、その学習塾が悪口を言っていた別の塾に通うことにしました。通っていた学習塾が悪く言うくらいだから、逆にひょっとしたら合うかもしれないと半ば博打のような気持ちでした。

 次の塾は、中学受験を専門に集団指導をし、受験前には合格鉢巻をして臨むような進学塾です。私自身が中学受験などしていないので、正直、足のすくむ思いでその塾の門をくぐりました。前の塾が悪口を言っていなければ、到底ここに通おうとは思えなかったでしょう。

 最終的に、この学習塾が本当に息子に良かったのです。

 事前に相談に伺い、前の塾で問題になった経緯をお話ししたのですが、「雑談の多い子?ああ、いますねえ。授業に関係があれば続けさせますし、横道にそれたら話を切り上げさせます。それが何か?」と、考えてみればごく当たり前のことをおっしゃるのでした。

 前の塾では発達障害のことを言おうかどうか迷っているうちに向こうから「こんな困ったお子さん、障害児なんじゃないんですかあ?」と嫌味を言われるようになりましたが、こちらの塾の先生も息子を見てお分かりになるところはあったようです。

 ただ、それを親相手にグズグズ言わず、本人に「君は集中力がないようだね。で、それで損をするのは君だよね? ここに来たらここの先生たちは君のことをいっぱい叱る。けれど、それは君のためだよ。君のために僕たちは一生懸命に君を叱るよ」と言って下さいました。

 この塾は特に息子にだけ厳しかったわけではなく、どのお子さんにも忘れ物や字の汚さ、礼儀作法を厳しく叱る方針でした。どの先生も、どの場面でも、どの子に対してでも、きっぱりさっぱり「悪いものは悪い」と一貫した態度でした。

 一方で何か良いところがあると、「ここは偉かったねえ!」と感情をこめて褒めてくださいました。メリハリのあるご指導だったと思います。

 小学生といえども、ものの道理が分かりつつある年頃です。きちんと向き合ってくれると思えば、「怒られている」のではなく「何が悪いのか教えてくれている」と思うこともできるのでしょう。数カ月通っただけで、息子ともしっかりとした信頼関係ができました。

 ある日、提出物を忘れて授業中にベソをかくほど厳しいお叱りがあったそうです。しかし、帰宅した息子からは「だけど!忘れた僕が悪いし!先生は僕のために叱ってくれたんだから!塾に苦情とか入れないでね!」と釘をさされてしまいました。卒業した今も、時折その塾に遊びに行ったりしています。

 小学校の先生も5年生になって変わりました。大学新卒の先生と伺って心配だったのですが、ここは校長先生が一枚上手でした。新卒の先生のサポートを名目に、校長先生をはじめ手の空いた先生方が副担任のようにきめ細やかに学級運営に加わってくださいました。

 新卒の先生も、几帳面に、あらかじめ家庭や本人と約束した「クールダウン」の機会を守って下さいました。お陰様で、学校で癇癪を起こすことも劇的に減りました。

3.メリハリのある一貫した指導が大事では

 振り返ってみると、ベタベタと子供に妙な思い入れを持たず、「良いことは良い」「悪いことは悪い」という点を一貫して示してくださる先生が、息子にとって相性の良い先生だったと思います。

 恐る恐る中学受験を考え始めましたが、そのうち親子で通いたいと思える学校が現れました。「きっぱりさっぱりした教育方針」だからこそ「子供たちがのびのびしている」雰囲気が良いと思いました。

 模試での偏差値の乱高下にハラハラしましたが、無事合格できました。ごく普通の偏差値の学校ですが、学校でも塾でも次の進路が決まったことを喜んで頂き、良い受験ができたとしみじみ思います。

 私は地域の親の会に入っていますが、4年生の始めの塾の先生や学校の担任の先生について愚痴を聞いてもらいました。先輩お母さん達からは、「あらまあ、ずいぶん面倒くさいタイプにあたっちゃったねえ」「低学年向けの先生だよねえ」とコメント頂きました。

 中学生以降は、あの手の面倒なタイプの教育関係者はあまりいないだろうと少し安心しています。

[参考記事]
「発達障害者支援センターと学校の連携の結果、通級へ行くことに」

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