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発達障害による苦しみから飛び降り自殺をした彼女

この記事は20代の男性に書いていただきました。

…………..

 私と彼女は、二人とも発達障害を持っています。彼女は長い間統合失調症と診断されており、あとからそれが発達障害による二次障害だったと知らされました。

 彼女に話をきくと、「最初に診断を受けた統合失調症も後から診断された発達障害も、自分では受け止められなくて、病気や障害のせいじゃない、自分自身の性格のせいだ!って言い張っていたな。いまでもその考えは持っているけど、今では少し受け入れられるようになってきた」と言えるまでになっています。

 彼女がその言葉を言えるようになるまでには、長い間の苦しみがありました。彼女の過去と、私と出会って変わっていった彼女の話をしたいと思います。

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周りと比べて普通、ちょっと違うのは自分のせい

 彼女は小中学校では人間関係が苦手で、クラスメイトとは話が合いませんでした。でも周りは、彼女が勉強が普通にできていたので、発達障害とは思いもしなかったようです。

 高校のころから、彼女は自分から壁を作り始めるようになったのですが、特に周りからイジメられることもなく、そのまま大学に進学しました。

 彼女曰く「そのときの私は、普通に大学まで進学して、普通に卒業して、社会に出るんだと思っていたね。自分が普通と違うという感覚は、みじんも感じていなかったから、自分が周りと違うのは自分の個性、自分の性格のせいで、それが普通だと思って過ごしていた。」

自分が『普通』ではないことを知った辛さ

 彼女は無事高校を卒業し、大学に入学しましたが、この頃から周りとの差を感じるようになるようになりました。徐々に心が塞ぎこんでしまい、被害妄想が強くなっていき、大学に行けなくなってしまいました。

 その頃には周りとは違うと常に感じるようになり、自殺願望も強くなっていきました。その思いに駆られて、21歳の夏に陸橋から飛び降りて自殺を図りました。幸い、水がクッションになり無事でしたが、自殺未遂として病院に連れて行かれ、そこの病院の精神の医者から統合失調症と診断されました。

 そのあと、精神科をいくつか受診して発達障害と診断されましたが、統合失調症の方の治療がメインで、発達障害にはあまり触れられなかったそうです。 

「私自身は統合失調症や発達障害以前に、精神科に連れてこられたのが一番つらかったよ。今までの自分をすべて否定されたみたいで、その時の私はそれを受け入れる事が出来なかった。自分は『普通』なんだって主張し続けたんだけどダメだった。私の事をちゃんとみてくれる人が周りにはいなかった。だから、私は誰も信じられなくなり、誰にも心を開かなくなってしゃべることができなくなっていったんだ。」

繰り返す入院

 彼女は発達障害の診断を受けたあと、トイレや押し入れに籠もったり、端から見たら変な行動をとっていた為、精神科に通院して2~3回ほどで「医療保護入院」という形で入院させられました。そこからは、完全に自分を閉ざしていたので、あまり憶えていないそうです。

 そのあと、何回か入院したり退院したりを繰り返していましたが、退院した後は、好きでもない人と同棲したり、薬の多量服用をしたりと、めちゃくちゃな生活を送っていたそうです。

 彼女曰く「この頃の私は、うまく表現はできないけど、自分が自分でない誰かに操られている感じがした。21歳から26歳くらいまではそんな感じ。6回目くらいの入院の時は、ひたすら黙って他の誰ともコミュニケーションをとろうとしなかった」

 こんな時、私は彼女と出会いました。

彼女との出会いと、変化

 私はこの時期、仕事のトラブルで自信をなくし、任意入院をしていました。そのとき病棟が同じだったのが彼女です。最初に出会ったときの彼女は、無気力で、いつも部屋に籠っていて、食事の時にちょっと見かける程度でした。

 そんな時、彼女自身から私に相談しにきてくれました。最初の相談内容は、どうすれば先生に自分のことを伝えられるかという内容でした。彼女は言葉を伝えるのも難しい状態でしたが、必死に話をしている姿を見ていくうちに、「ああ、この子は普段は話さないけど、本当は伝えたいことがいっぱいあるんだ。でも、発達障害が影響してどうやって伝えればいいのかが分からないのか。」と感じました。

 そんな彼女を私は支えてあげたいと思いました。時には彼女と一緒に作業療法をしたり、二人で紙に言いたいことを書き合って頭の整理をしていました。そのおかげか、彼女はどんどん調子が回復し、自分からいろんな人とコミュニケーションを取れるまで回復しました。

自分を受け入れられた先に見える世界

 担当の先生からは、「統合失調症ではないし、もう十分安定しているので薬もいらない。そろそろ通院しなくても大丈夫だね」と言われるまで回復しました。私たちの関係は退院してからも続き、最初は私が彼女を支えてあげていたのが、だんだんとお互いを支え合うようになりました。

 彼女に昔と今を比べてどう思う?と聞くと、「あの頃の私は、周りが何と言っても『自分の症状は病気や障害とは関係ない。自分の性格のせいだ!』と自分を責めていたね。今思うと、そんな考え方だと、結局自分を否定しているのは自分自身になってしまうから、人生が楽しくならないと思う。今では、病気も発達障害も、自分自身の悪いところじゃなくて、自分の個性だと受け入れられている。まだ少し抵抗があるけどね。でも、過去の自分に一言言えるなら、『今すぐ全てが受け入れられないかもしれないけど、いつか全部受け止められるから!そうすれば信じられないくらい人生が楽しくなるよ!』って伝えたいな。」と答えてくれた。

 出会ったときの彼女と今の彼女を比べると、『ものすごく成長したな。』って私も思います。

 どんな人だって何かしら抱えているものがあります。私たちは、それが発達障害でした。他人と明らかに違うことにとても悩み、苦しんだ時もありました。人生を遠回りしてきたかもしれません。

 けれども私たちは今、幸せを感じて生活しています。彼女はもう決して自殺しようとは思わないでしょう。それはお互いが支え合い、苦しみを乗り越えたことで得ることができました。

 いま苦しんでいる人も、共に支え合ってくれる人がいるはずです。まずは、周りの人を頼ってみてください。心を閉ざすのではなく、勇気を出して伝えることが大事だと私は思います。

[参考記事]
「発達障害により仕事を転々。怒られてばかりで自殺を考える」

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