この記事は40代の女性に書いていただきました。
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私には24歳の重度自閉症の息子がいます。自閉症の息子を育てるにあたって苦労したのが、息子との外出でした。
息子は8歳くらいまでは元気も良く多動傾向も強かったため、親の手を振りほどいて走って行ってしまいます。発達障害児を持つ親にとって、お出かけは一苦労です。しかしお出かけをすることは子どものストレス発散にもなりますし、親子のストレス解消にもなるので、我が家も休日のお出かけは欠かせませんでした。
■お出かけ先でのパニック
我が家の場合、多動傾向がとても強く、急にどこに走り出すか分からないため、ずっと手をつないでおかねばなりませんでした。常に外では主人と私でがっちり両側を固め息子の手を握っていました。
息子は幼少期特に多動がひどかったため、すぐに興味のある方へと急に走り出して行ってしまい、公園などではよそのお子さんと遊具の取り合いなどを急に始めてしまい、双方で大泣きすることも多々ありました。
仮に他人の子に暴力を振るってしまって「この子障害児だから、よく分からないのです。ごめんなさい」では済まないので、息子が思わぬところで加害者になってしまわないよう常に気を張っていました。
息子が小学校高学年くらいになり体が大きくなってからは、小さな子どもの泣き声など人の泣き声に強く反応してイライラしてしまい、泣いている子どもを見かけると攻撃しに行こうとしたりするため、さらに目が離せなくなりました。そのうち「赤ちゃん=泣く」という認識が出来てしまい、赤ちゃんを見ると叩きに行きたくなる衝動に駆られるようなってしまいました。自閉症に限らず発達障害の子どもは聴覚過敏を持っていることが多く、息子もそうです。
ですので、できるだけ赤ちゃんが居る場所へお出かけをすることは避け、スーパーなどでも赤ちゃん連れの人を見かければ目的を果たさずに帰宅することもたびたびありました。
■お風呂の練習
息子は小さい頃、触覚過敏が酷く、お風呂嫌いだったので、慣れさせるために「お出かけとセットで楽しんでもらおう」と家族でたくさん温泉やスーパー銭湯に通っていました。いわゆる「お風呂の練習」です。最初は家より熱めのお湯に泣き叫んだりして大変でしたが3年間毎週日曜日に温泉へ通っていたので、だんだんとお風呂や温泉が大好きになっていました。これは触覚過敏の緩和にも役立ったと思っています。
■行動援護のサービス
地域の福祉課窓口などに、ヘルパー支援のサービス申請をして審査に受かると「行動援護のサポート」を利用できるようになります。
行動援護とは、重度の障害者が外出の際にヘルパーさんにサポートをしてもらえるサービスです。自閉症の人はこの「行動援護」システムではなければ対応が難しいところがあり、私の息子も8年ほど利用しています。
大好きな電車に乗って出かけをする、近所のスーパーに好きなものを買いに行く、お散歩をする、プールに同行してもらう、大好きな温泉に一緒に入ってもらう、などヘルパーさんとともにたくさん外出しています。
行動援護サポートを利用するようになって、行動範囲が広がり、彼の日常も大きく変化しました。
■ヘルパーさんと温泉やプールへ
母親は異性なので、一緒に温泉やプールの時の着替えに同行することは、年齢が上がるとなかなか難しくなってきます。行動援護を利用するようになったのは、温泉やプールへ一緒に行ってもらうことが目的でもありました。男性ヘルパーさんと一緒にお風呂やプールに付き添ってもらえるのは、息子にとってとても嬉しいことでした。
■ヘルパーさんとの信頼関係
息子の場合は人見知りが強く、初対面の人や初めての場所に馴染めないタイプなのですが、自分の好きな場所へ連れて行ってくれるヘルパーさんとはすぐに仲良くなりました。
お出かけ時のサポート中は食事・排泄のケアはもちろんですが、外出先が初めての場所で、息子が不安定になった時も、急に赤ちゃんなど小さい子を叩いたりするような不適切な行動やパニックが出ないように配慮してくれたり、予期せぬことが起きてしまってもトラブルが広がらないように適切に対処してくれています。
■自閉症のトイレ事情
自閉症の人は、トイレに行きたいと思っても直前になってしか教えてくれないのですが、息子の場合もそうです。毎回限界の一歩手前で教えてくれるため即対応しなければならず、失敗したこともあります。失敗すると本人も不快なため機嫌が悪くなってしまうのです。
それ以降、外出中トイレのことで困らないようにと、散歩中やドライブ中も意識してトイレの場所をチェックしています。
このようにいろいろな方にサポートされながら、現在も息子はお出かけを楽しんでいます。
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