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自閉症の娘と息子のパニックの違いを比較してみた

この記事は30代の女性に書いていただきました。

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 私には二人の自閉症の子供がいますが、二人ともパニックを起こします。しかし、パニックの種類は二人とも違いますので、その違いを比較してみたいと思います。

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自閉症の娘のパニックは…激しくて分かりやすい

 知的障害を伴う自閉症の娘は、パニックを起こす場面は「とにかく思い通りにならないとき」「予想外のことが起きたとき」です。

 誰でもそういう場面では不快なことが多いでしょうが、娘は言葉が通じにくいこと、パターンから外れるのが苦手なこと、さらに周りの目を意識する社会性もなく欲求のまま表現することが相まって、少しのことで激しいパニックを起こしやすい子です。

 例えば、スーパーの買い物をしていたとき、お世話になっている幼稚園の先生と偶然会ったのですが、そのとき非常に激しいパニックを起こし、七転八倒しながら「いや」を連呼していました。傍から見たら、よほど大嫌いな先生なのかと思われそうですが、とても優しい先生で、普段は娘の方からべったりして離れないほど大好きな先生なのです。それでも、「好きな先生に会った喜び」よりも「いつもと違う場所で会う(ルールに外れる)」という不快感の方がはるか何倍も強いのでしょう。自閉症の子は自分のルールから外れることをすごく嫌がります。私自身は、先生のことを「いや」と言ってるわけではないのは分かるのですが、先生に対しても周りの人に対してもとてもバツの悪い気分になり申し訳なくなります。

 その他にも、何度か連続で買っていたネギを今日買わなかったり、買い忘れがあっていつも行かない道で戻ったり、数回続けて利用したレジじゃない場所でお会計したり、など娘と買い物に行くとパニック起こす場面は無限にあります。これらも「いつもと違う」ということが原因です。こういう状態がいつもだと疲れ切ってしまうので、一番の対策は「娘を連れて買い物に行かないこと」しか考えられません。常にそういうわけにもいかないので、連れて行くときもありますが、パニックを起こすと奇声をあげるわ脱走するわ床に転がるわでとんでもない騒ぎになり、周りの視線も痛いです。

 だからといってお菓子で釣ったり、言うことを毎度聞いたりしては「騒げば良いことある」と学習されても困るので、基本的にはパニックが起こっても冷静に「それは買わない」「騒がない、静かに」「寝ないで、立ちます」などと言い聞かせながら頑として譲らない姿勢を貫きます。でも、本人の欲求を毎回無視するのもどうなんだろうかと悩んだり、状況によっては静かにさせることを優先せざるを得ないときもあり、なかなか難しいです。

自閉症の息子のパニックは…静かで分かりづらい

 一方で、知的な遅れのない自閉症の息子は、娘と違って非常に分かりづらいです。そもそも、息子がパニックを起こしていることも、私は全然気づいていないことが多かったのだと思います。息子は発語こそ遅かったものの、4歳過ぎた頃から流暢にしゃべりますし、色々な理解も年相応だと思いますが、だからこそ時折起きる不思議な行動を私は全く理解ができませんでした。

 例えば、視力に問題があり眼科に行ったときのこと。視力検査をし始めたら、突然「あのさ~ぼく〇〇やりたいんだよね」「もうだるい、ねむーい、お腹すいたぁ」「ねーアニメでね、犬みたいなロボットが出て来てね~」…とにかく態度が悪くふざけた調子で関係ないことまでべらべらしゃべりだし、検査してくれてる看護師さんを困らせたのです。

 当時まだ診断も出る前で、私は訳も分からず平謝りしながら「きちんとやりなさい」「ふざけないでやりなさい」「待ってる人もいるんだよ迷惑だよ」などと息子をその場で叱るも、そのふざけたような態度を止めず、私は内心ものすごくイライラしてしまいました。

 眼科を出てから私が叱ると、息子はボロボロと泣き出して「ごめんなさい。次はちゃんとやる」と言うのです。でも、次回また検査すると同じような態度になり、終わると泣き出して「ごめんなさい」と。イライラするし、どうして泣くほど反省するのにまた繰り返すのか、本当にわけが分かりませんでした。

 でも、それを他の療育仲間のお母さんに愚痴として話したところ、「それふざけてるっていうより、パニックを起こしてるんじゃない?」と言われました。どう見てもふざけて相手をおちょくるような言い回しと態度で、とてもパニックなんて深刻な事態には見えません。でも、もしかしたらと思って、色々そういうふざけた態度になる場面を他にも思い出してみると、決まって「息子自身が反応することを求められると時」「検査やテストなどで、その結果が大切なものの時」「相手が厳しそうだったり、誰かを待たせていたり、ピリピリした環境の時」でした。

 息子はきっと「ちゃんとやらなきゃ」と「やれないかも」の狭間でパニックを起こしていたのでしょう。関係ない話をしたり、態度悪くして検査を進まなくしたりするのが息子にとっては「やれない自分」と向き合わずに済む手段…だったのでしょうか、その思考の過程は測りかねますが、それが特性なのでしょうね。

 私は眼科での検査について、「分からないなら分からないで構わない、分からないからダメということじゃない」という説明をして、家で手作り視力検査道具を作り、息子と何度も練習しました。「え、見えなくてもいいのー?!」「全部見えなきゃいけないんだと思ってた!」と息子にとっては衝撃的だったようで、練習も面白がってやって、その次から眼科での変な態度は一切無くなりました。私が叱ったり怒ったりは、効果が全然ないどころか、さらなるプレッシャーを与えてパニックを悪化させただけだったと思います。

 息子がパニックを起こす場面は、「こう振る舞うべき環境」と「プレッシャーを与えられる環境」のとき。自信がない息子は、できないかも、どうしよう、でもやらなくちゃいけない、出来なかったら…となってしまうようです。それがとても簡単なもので、周りが理解しにくいものでも。娘とは逆で、周りからの期待が分かっている分、本人の中ではつらい状況だと思います。一言でいうと「考えすぎ」なのでしょう。

2人のパニックの違いを比較すると

 娘は、激しくパニックを起こすので一目瞭然、周りも良くも悪くもそれを見て分かりますし、収まったときも分かります。対策も単純で、(とはいえ万全な対策は難しいのですが)欲しいものを視界から消したり、嫌な刺激から遠ざけたりと、分かりやすいのです。

 息子の方は、そもそもパニックを起こしているかどうかも分かりづらく(親である私ですら、理解に苦しむことも多い)、ただふざけているように見え、それによって叱責や暴言などを受けることもあると思います。これが続くと自己肯定感が低くなり、将来にまで響く可能性がありますので、パニックの存在に気づいて良かったと思っています。ただ、理解しているつもりの私自身もふとした瞬間にイライラしてしまうこともあり、反省する日々。息子を追い込んでしまうのも、引き上げてやれるのも、親や周りの対応一つなんだろうなと思います。

 以上、二人の子供のパニックの違いを比較しましたがいかがでしたか。ポイントは息子のような静かなパニックもあるということです。非常に気づきにくいので、よく観察しないと見逃します。

[参考記事]
「自閉症スペクトラム障害(ASD)って何?その特徴とは」

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