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ADHDと診断される前の気持ちを小学2年生の息子に聞いた

 この記事は小学2年生の息子さん(ADHD)を育てている母親に書いていただきました。まだ、小学2年生ですが、色々なことを考えていることが分かります。ぜひ、小さなお子さんがいる方は参考にしてください。子供がどんな気持ちでいるのかが分かると思います。

……………

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自分はダメな子だと思っていた

 私はADHD(不注意性が優勢)の息子を持つ母親です。彼は現在小学2年生。診断が下ったのは小学1年生の秋でした。発達障害であることには違いないが、ごく軽度であるため、自宅での行動療法のみで十分コントロールは可能との医師の判断により、服薬・療育・定期通院は行っていません。

 母親としての目線からではありますが、息子の特徴をできるだけ客観的にまとめました。
・多動性はあまりみられない

・WISC-Ⅳでの検査項目ほぼすべてが平均値を大幅に上回っている

・ワーキングメモリも平均値以上ではあるが、他項目よりは1ランク劣る

・優先順位をつけて考えることが苦手

・衝動性が強め

・一つのことに集中すると他のことが目に入らなくなる

・学習面での問題はない

・性格面では、世話を焼きたがり・やさしさ・素直さが目立つ

 今回、息子本人の気持ちをより深く知ってみようと思い、息子へのインタビューを行いました。私の方で言葉を補完する場面も多くはありますが、発達障害を持つ子供本人の抱える様々な感情への理解の助けになれば幸いです。

―息子くん(以下、H)はさ、去年ADHDだって分かったじゃない?それまでの自分の気持ちを聞かせてほしいんだけど。いいかな?例えば、お母さん(以下、私)によく怒られてばっかりだったけど、その時のこととか。

「なんかね、怒られてばっかりだったから、ちょっとヤだった。」

―それは本当に申し訳ないと思ってるよ。もっと早くHのことを気付いてあげられれば良かったなぁ、と。

「ご飯の時とかさ、テレビがついてると(テレビに夢中になって)ご飯食べられないじゃん。」

―あったね。テレビの内容は一切関係なかったもんね。好きなアニメとかなら内容に夢中になるのもわかるんだけど、経済ニュースとか政治番組のなにがそんなに面白いのか不思議だったよ(笑)

「酢の物(Hが苦手なメニュー)でも、かぼちゃの煮物(Hの大好物)でも、全部忘れちゃうからさ。」

―「忘れる」ってのは、ご飯の存在自体を?

「そう。で、お母さんとかに声をかけられて『今はご飯を食べる時間』て思い出すんだけど、気付くとまたご飯を食べるの忘れてるんだよ。」

―そうね。で、最終的にお腹いっぱいになっちゃって残す。そして怒られる。確かにね、せっかく作ったのに食べてもらえないとさ、こっちはめちゃくちゃヘコむわけよ。最近Hも料理するからなんとなくわかるでしょ?

「うん。頑張って作ったお料理を食べてもらえないと悲しい。でもさ、食べたくないわけじゃなかったんだよ。」

―そうだね。Hは基本的に好き嫌いないしね。でもなんで食べられないのか分からなかった?

「そうそう。そうなんだよ。忘れちゃうんだよ。それ(=どうして食事中であるのかを忘れてしまうのか)が自分でも分からなくて。ご飯を食べたいのにできないじゃん。お母さんのご飯はおいしくて大好きなのに、全部食べられなくてごめんなさいって思うのと、食べ物は命じゃん。だから、全部おいしく食べてあげられなくてごめんなさい、っていう気持ち。でもワザとやってるんじゃないのに怒られるから、おれは馬鹿でダメなのかなって思ってた。」

―そういう気持ちに気が付いてあげられなかったのは本当にごめんね。

「それはお母さんのせいじゃないから今はもういいんだけど。例えばさ、運動会とか発表会とかではさ、お母さんは『結果はどうでもいいんだよ。大切なのはどれだけ頑張ったかだよ。』って言うじゃん。でもさ、おれはさ、ご飯の時も頑張ってたんだよ。おんなじ頑張ってることなのに、ご飯とか片付け(で上手くいかない場面)では怒られるじゃん。だから自分はダメなのかな?って。」

―頑張るって具体的にどうすることなのか分からなかった?

「うん。お母さんは(ADHDの診断が出る)前は『ちゃんと』とか『しっかり』とか言ってたじゃん?でも、おれはちゃんとやってたし、しっかりやってた。」

―でも、なぜかお母さんから起こられる、と。

「うん。じゃあ『ちゃんと』ってどんなことなのか分からなかったし、なんで怒られるのか分からなくて悲しかった。」

―それは怒られることが?

「それもあるけど。でも、そんな簡単なことが分からないおれは馬鹿なのかな?って。みんなができることが出来ないおれはダメなのかな?って感じ。」

―そんな苦しいのに気づいてあげられなくてごめんね。

「なんかね、その時は自分のことが嫌いになったし、自分でも何でできないのか分からなくて。なんていうか、一人ぼっちみたいだった。」

―自分のことをわかってくれる人がいない気持ち?

「うん。どうしていいか分からなくても、助けてくれる人がいない。でもそれはおれがダメだからしょうがないんだって。」

 言いながら泣き出すH。しばし会話が中断される。お茶を入れなおし、落ち着いたところで再開する。

―そんな時は、自分で自分のことをどう思っていた?

「あんまり好きじゃなかった。とげとげしててヤな感じ。優しくしたいのに、それが上手くできなくて、苦しかった。こういうのは俺じゃないって思ったけど、どうしていいかわかんなかった。でも今は、優しいおれが戻ってきたみたいでうれしい。」

―今は自分のことをどう思う?

「今の自分は、よかった(※安心したの意)って思う。昔の自分が戻ってきてくれたみたいだからよかった。」

―そっか。それはよかった。私もうれしいな。きっかけはやっぱりお医者に行ったこと?

「たぶんそう。〇〇先生(※ADHDの診察と診断を行ってくれた医師)に会うまでは、自分でもどうしてできないのかが分かんなかったから、謎が解けたみたいだった。お母さんが病院につれていってくれてよかったなって思う。ありがとう。」

―いえいえ。こちらこそ。Hが悩んでいた時に力になってあげられなくてごめんね。私も病院に行ってよかったなって思うよ。

 Hは、話の途中で泣き出してしまいました。もともと泣き虫の傾向はあったものの、最近ではほとんど涙することはなくなっていたので、その姿はとても衝撃的でした。Hは、まだ小さなうちから、これほど苦しみを抱えて自分を責めていたことを改めて認識させられ、親としては本当に申し訳ない気持ちでいっぱいでした。

 次回は、そんなHがどうやって「昔の優しい自分」を取り戻していったのかについて話を進めていきます。

続きは「ADHDの息子が低下した自己肯定感を取り戻すまで」

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