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発達障害の夫と子どもの間に立つ妻の精神的な負担。病むこともある

この記事は30代の女性に、夫と子どもの間に立つ妻の苦悩について書いていただきました。

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 私の夫はかなり我が強く、すぐに感情的になり一方的に怒ったり、話し合いを持とうとしても話が噛み合わなかったり、こだわりが強く新しい事をやろうとしなかったり、不安も強く、妻である私が常に一緒じゃないと嫌がる…など、やりにくい面が多々ありました。

 結婚してからの常識のない行動にびっくりすることもしょっちゅうありましたが、プライドが高く本人の弱みを指摘すると激昂するのでひたすら我慢する日々でした。

 結婚後しばらくして子どもが産まれ、育てにくい我が子の育児に悩み奮闘する毎日でしたが、子どもが小学生になった頃にやっと発達障害があるという事が分かりました。発達障害の診断を告げられた日、「子どもと、この子にそっくりな夫を抱えて、一人でどうやってやっていこう…」と、ただただその不安と心配から、帰りの車中で号泣したのを覚えています。

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夫の発達障害に気付いた時

 診断を受けたその日から、私は発達障害について調べまくりました。本屋さんで手に取り、これはいいと思った本は片っ端から購入し、隅から隅まで読みました。そうして私の中に知識が蓄えられると共に、ただ「育てにくい子」だった我が子のひとつひとつの行動が、どういう特性のどういう心理状態で起こるのか分析できるようになってきました。

 それと同時に、夫の様々な困った行動への疑問も、我が子と同じく発達障害の特性ゆえに起こっている事が分かってきたのです。

 そっくりな父と子はそりが合わない

 発達障害と一言で言っても色々なタイプがあります。ADHDが強いタイプもいれば、アスペルガー気質が強いタイプもいます。どちらも半々(合併していて)でどちらともいえないタイプもいますし、人それぞれです。夫は、ドラえもんに出てくる「ジャイアン」気質の強いタイプです。つまり、ADHDの性質でいえば「衝動性」が強く、抑制が効かないタイプです。

 また、夫は基本的に「自分が良いと思ったものはみんな良い、悪いと思っている事は悪い」という世界で生きています。「人は人」という概念がなく、自分の考えている事と違う言動をする人は許せません。その境界線のなさは身近な人であればあるほど強く表れ、家族に至っては自分の思い通りにできる存在、とすら思っていたようです。アスペルガー症候群を含む自閉症スペクトラムの人はルールから外れることを嫌う性質があり、夫もそういう意味では「自分のルール」から外れることが嫌いなのかもしれません。

 夫婦ふたりの時は、あえて機嫌を損ねるような事をしないので表面上は穏やかな毎日を送れていましたが、発達障害を持つ子どもが生まれてからはそうもいきません。子どもは親の顔色を見て、親の望むような行動ばかりを取るわけがありません。しかし夫はそれを理解できず、子どもがする行動ひとつひとつに常に不機嫌で、イライラしては舌打ちをしたり怒鳴ったり…。また、発達障害の人に多い聴覚過敏があり、大きな音も苦手です。子どもの泣き声でさえ神経に障るようでした。

 ですので、どこかへ外出しても、最終的には子どもが不機嫌になり泣きわめき、夫もそれに連れて怒り出し、険悪なムードで帰宅する羽目に。私はどちらの機嫌も取り、橋渡しをする事だけでエネルギーが奪われ、次第にストレスから、私が精神的に病んでしまいました。

夫が変わった大きな出来事

 そんな夫が変わったのは、障害を持たない定型発達の次男が産まれてからです。夫は次男を溺愛していました。穏やかでいつもニコニコしており、ひとり遊びも上手にする次男。次男は周囲の雰囲気が読めるので、あえて怒らせるような事もせず、場の空気を和ませてくれます。とにかく自分しか見えていない長男とはまったく違う次男。

 その大事な次男が悲しむ事はしないでおこうと、初めて父親らしく振舞おうと意識したのだと思います。そこから徐々にですが、夫は私の意見も受け入れるようになり、変わっていきました。今では自分が発達障害だと自覚をし、周囲に迷惑をかけないように自分なりに勉強しているようです。何年も、悪いのは自分ではなく周囲だ、という見方を変えられなかった夫が、次男の誕生により内省することが出来るようになったのです。

 今では、相変わらず難しい部分は多いですが、思春期に入った、自分にそっくりな長男に、当事者だからこそ分かる視点でアドバイスをしたり、支えようと努力しています。

発達障害者が家族を持つという事

 大人の発達障害当事者へのケアは非常に難しい問題だと思います。特に「ジャイアン」型のADHDの場合、周囲はものすごく困っていても自分に困り感がないため、自分の特性を受け入れようとしません。小さい頃からこのままでやってこれたという自信がなおの事,診断を受ける事へのハードルになります。

 我が家は幸いにも夫が自覚し、自分なりに頑張ろうと努力する方向へ向かいましたが、片方が発達障害を持つ夫婦の離婚率は8割と聞きます。元々人とのコミュニケーションが難しい障害なので、小さな社会である「家庭」という集団を維持していこうとするのは容易ではないのだと思います。

 家族間の関係を取り持つ役割を持たされた人(妻or夫)の負担は、とても重たいです。発達障害を持つ配偶者から「悪いのはお前だ」と言われ続け、精神的に病んでしまい、カサンドラ症候群になってしまう人も多くいます。もし家族が発達障害かもしれないと思った時は、大人の発達障害を診ることができる病院を受診したり、同じ立場の人が集まる自助会などに参加し、ご自身が倒れないようにすることも大事な支援のひとつだと思います。

カサンドラ症候群とは、アスペルガー症候群を抱えるパートナーと信頼感のある結びつきが形成できないことを原因として、精神的に追い詰められた妻や夫が精神疾患を発症してしまうことを言います。

[参考記事]
「アスペルガー症候群が原因で離婚。きっかけは妊娠と出産」

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