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発達障害の子が特別支援学級に行くまでの手順

 

 「障害」という言葉を聞くと、皆さんはどのような障害を思い浮かべますか。おそらく、身体障害や知的障害などを思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。しかし、ここ最近注目され始めている「発達障害」については、あまり知らないという人が多いと思います。それは、発達障害がほかの障害と比べ、外から分かりにくい、目で見えにくいという特徴が理由の1つでしょう。

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発達障害って?

 発達障害は、おおまかに「自閉症スペクトラム」「ADHD(注意欠如多動性障害)」「LD(学習障害)」の3つのグループに分かれています。

①自閉症スペクトラム
 コミュニケーションや対人関係に困難がある・こだわりが強い・興味の範囲が限定的などが特徴です。自閉症スペクトラムには自閉症、アスペルガー症候群などが含まれています。知的な遅れが伴わない自閉症を「高機能自閉症」と言います。

②ADHD
 注意力がなく、忘れ物をする・じっとしていられず、常に体が動いてしまう・衝動的に言動をしてしまうなどの特徴があります。

③LD(学習障害)
 知的な遅れはないですが、文字が読めない、計算が極端に苦手などの障害です。

 それぞれの特徴についてはおおまかに上記の通りですが、発達障害のすべてがこの3つのグループにきっちりと分類できるわけではありません。自閉症スペクトラムとADHD、またはADHDとLDなど合併しているケースもあります。この辺りは医師でも診断するのが難しいのが現状です。

 そしてどの障害についても、身体障害や知的障害のように、外から見ただけではなかなか分かりにくいです。じっとしいられなかったり、忘れ物が多かったり、そのような人がいても、多くの人は「落ち着きがないな」「物忘れがひどいな」などと思うだけで、「実は発達障害なのではないか?」とまで考えが及ぶことはなかなかないと思います。

近年、発達障害が注目され始めている

 しかし、最近はテレビや雑誌等でも発達障害について見聞きすることが多くなってきました。自分が発達障害であることを告白した芸能人(栗原類さん)もいましたよね。そういう方たちがきっかけで、子どももそして大人でも、「大人の発達障害」という言葉もある通り、発達障害に悩んでいる人たちがいるということが分かってきました。

 それでは実際に、子ども達の状況はどうなのでしょう?文科科学省によると、全国の小中学校の通常学級1クラスには、発達障害のある可能性のある児童が6.5%いることがわかっています。クラスに2人くらいが発達障害の可能性があるということです。

 この数は、昔と比べて増えているのかどうかははっきりとは分かっていません。数値は過去のデータと比べると確かに高くなっているかもしれませんが、それは、以前は現在よりも発達障害が知られておらず、障害として把握されていなかっただけかもしれません。また、発達障害を抱えている子ども達は昔からいたけれども、ただの「問題児」として見過ごされてきたのかもしれません。理由はどうあれ、現在、発達障害を抱えている子ども達はたくさんいるということがわかっています。参考までに川越市の例を挙げますと「自閉症・情緒障害」のクラスには平成28年度では3164人在籍しています。15年前の平成14年度が968人ですので、3倍くらいに増えている計算になります。

発達障害の子ども達は何につまずくの?

 通常学級に在籍している発達障害の子ども達にとって、ほかの子ども達と同じように勉強し、生活することは、程度の差はありますが簡単なことではありません。例えば、文字を書くにしても、こだわりが強い子どもはたった1文字を書いては消して書き直すということをずっと繰り返します。こだわりが強いため、自分が納得するまでやめられません。その間に、授業はどんどん進んでいくため、ついていけなくなってしまいます。

 また、その日の時間割が何かの都合で変更になったり、イレギュラーな行事(例えば避難訓練)があるとパニックになってしまう子どももいます。そのような子どもに対しては、予め、1日のスケジュールやその日にある行事を伝えておくことが必要になります。

 このように、学校生活を送る上で困難に直面することはたくさんあります。しかし、クラスには40人近い子ども達がおり、担任の先生もつきっきりでサポートするということはほぼできません。もちろん、先生の接し方やクラスの友達の協力を得てできることもたくさんあります。今は学習指導員という、担任の先生のほかに学習や生活面をサポートしくれる方がクラスの中にいる場合もあります。しかし、それでも通常学級の中では思うように力を発揮できない子どもたちも多いのです。

特別支援学級というところ

 通常学級にいることによって、できないことが多くなり、学校が嫌になってしまったり、自分を嫌いになってしまう子ども達もいます。そのような子どもたちにとっては、通常学級ではなく、より個別のサポートが受けられる場所が適していると言えます。発達障害のある子どもたちがサポートを受けながら自分の力を育てていく場所の1つとしては、特別支援学級というところがあります。

 特別支援学級とは、小・中学校の中にある、障害種別ごとに編成された少人数学級のことです。知的障害、肢体不自由など障害種別ごとに分かれており、発達障害のこどもたちは、実態に応じて「知的障害」「自閉症・情緒障害」「難聴」「弱視」「言語障害」「身体虚弱」という特別支援学級に在籍することになります。少人数のため、先生の目が行き届きやすく、子ども一人ひとりに応じた支援が可能となります。全ての小学校に以上の全ての教室が設置されているわけではなく、もし通っている小学校に目的とする学級がない場合には違う学校に行かなければいけません。例えば川越市で言えば牛子小学校には「知的障害学級」はなく、「自閉症・情緒障害学級」はあります。牛子小学校学区に通っている知的障害のある子は近所の南古谷小学校に行かなければいけません。

具体的にどのようなサポートがあるの?

 特別支援学級では、その子の得意・不得意な面を把握し、不得意なところを改善する指導が行われています。発達障害のある子どもたちは、人との関わり方がわからない、うまくできないということがとても多いです。そのような子どもたちに対して行われることが多いのが、「ソーシャルスキルトレーニング(SST)」です。これは、社会で生きていくために必要な対人関係スキルを身につけるためのトレーニングです。挨拶の仕方、話の聞き方などの基本的な姿勢から、具体的な場面を想定して、その場合にはどのような声がけが適切か、どのように振舞うべきか、といったようなことをロールプレイなどを通して学ぶことができます。絵カードや写真を使用して、ゲーム感覚で学べます

 学習面においては、子どもの実態に応じた内容で進めていきます。そのため、通常学級とは異なる内容を学習する場合もありますが、その子のペースに合わせて無理なく勉強できるというメリットがあります。また、学習方法についても、子どもの苦手な部分をカバーするサポートがあります。例えば、LDの子どもで文字がうまく読めない、どこを読んでいるかわからなくなってしまうという場合には、読んでいる部分に線を引きながら読んだり、読んでいない文章の部分を白紙で覆い隠して、読んでいる箇所を分かりやすくします。

 また、耳から聞いたことを記憶しておくことが難しい、すぐに忘れてしまう子どもたちには、視覚教材を使用して視覚から情報を得られるようにしています。今はiPadの視覚教材を使用して学習しているところもあります。

 これらのサポートは一例なので、ほかにも発達障害の子どもたちの実態に合わせて支援が行われています。

特別支援学級に行くまでの流れ

 発達障害のある子どもたちの就学先として、通常学級・特別支援学級・特別支援学校があります。自分の子どもはどこに就学すれば良いのか?どこが適しているのか?それを相談し、就学先を決定するのが就学相談です。就学相談では、保護者・児童・教育委員会が話し合い、就学先を決定します。これは、子どもにとって必要な環境を選択するために非常に重要です。地域によって異なりますが、だいたいは6月〜11月頃に行われる場合が多いです。川越市では特別支援学級の見学を6月と10月に行うことが可能です。

 また、すでに学校に在籍しており、就学先を変更したい場合でも、就学相談を受けることができます。こちらの場合は、いつ就学相談を受けることができるのか、地域の教育委員会に確認しておいた方が良いでしょう。

 親が市町村の教育委員会に相談をし、職員と面談をします。面談時には、子どもの家や保育園、幼稚園での様子を詳しく説明します。既に発達障害の診断を受けている場合には診断書を持って行ってください。診断や検査を受けていない場合には受けるようにお願いをされる可能性があります。

 その後、関係者が判断の材料にするために子どもがいる保育園や幼稚園に行き、普段の行動をみてもらいます。そしてこれまでの面談や検査の結果を踏まえ、教育委員会でどの就学先が適しているかを話し合います。その後、話し合いの結果判断された就学先について親と面談し、どこの学校へ就学するのか決定がされます。もちろん、親の意思を尊重して、無理やり「あなたのお子さんはこっちへ」というやり方はしませんので安心してください。

 地域によって内容や流れは異なりますが、就学相談の流れについてはこのようになっています。子どもの意見も聞きながら、納得のいかない点があれば、再度相談してみた方が良いでしょう。一番重要なのは、「子どもにとってどの学校が合っているのか」を考えることです。

発達障害児は特別支援学級に行くべきなのか?

 特別支援学級では、子どもに応じた学習内容や生活支援があると説明しましたが、発達障害のある子ども達が、みんな特別支援学級に行くべきということではありません。発達障害があっても、通常学級で先生やクラスの友達の理解と協力を得て生活している子ども達もたくさんいます。通常学級の方が居心地がよく、のびのびと過ごすことができる場合もあります。確かに、特別支援学級では通常学級と比べて個別に配慮した支援が受けられるかもしれませんが、地域や学校によって実態に差があることも事実です。

 担任の先生も、特別支援学校の教員免許をもっている必要はなく、普通小・中学校の免許をもっていれば学級を受け持つことができるため、障害の基礎知識や対応に関してばらつきがあることが想定されます。

 子どもをどの学級・学校に入れたらいいのかについて、一概に「ここがいい!」と言うことはできません。普通学級に入って、ダメだと感じたら特別支援学級へ行くことも考えればいいです。一番は子どもが居心地の良いと感じるかどうかです。親の見栄は関係ありません。

[参考記事]
「学習障害の息子は特別支援学級のサポートで成長が加速」

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